前回の記事でSpeculative な事業アイデアの考え方について書いてみたが、そのなかでBig Issueの話を記載した。そのBig issueにおいてのスタートアップ起業のトレンドについて考えてみたいと思う。
これもどこかで言語化したいが、つまりロジカルシンキングにおいて捉えられる課題は、変化の少ない時代において、Big Issue(気候変動など)しか残っていなくなってきている / Big issueの時代になりつつあると思っている。(ロジカルシンキングの限界とスペキュラティヴシンキングの可能性より)
このことについて考えさせられたのは、a16zというUSの著名VCが提示したAmerican Dynamismというナラティブについて考えていたからだ。なので今回はその文脈整理を行った上で、日本に転用するとどういった投資テーマ・起業テーマがあるのかを考えてみたい。(ちょっと今更感あるのはご勘弁、考えていたけど書くのが遅くなりました。。)
American Dynamismとは
a16zのメンバーである、Katherine BoyleがBuilding American Dynamism という記事を2022年1月に書いたことをきっかけに、a16zが一つの投資ナラティブとして盛り上げているテーマであると理解している。(奇しくもその翌月にウクライナ侵攻が怒ってしまったタイミングである。)
ざっくりいうと、シリコンバレー文化を纏ったテック起業家がもっと国益に係るビジネスを立ち上げる/Buildすべきだということを語るナラティヴである。
その国益というのは例えばわかりやすいのは国防であったりそういった軍事産業もよく参考にだされるが、それだけではない。航空宇宙であったり、製造業であったり、教育などでもあったりする。そういったアメリカという国を支えるような産業に対して投資をしていくことを推奨している。
これはコロナのときに、Marc Andressenが書いた “It’s Time to Build”の文脈の地続きにあるものだと言えるであろう。大事なことに関して想像力が欠如(新しいウイルスの危険性は存在していたのに対策ができていなかった)していて、Buildできてなかったことについての憂いと、もう一度重要なイシューに対してBuildをしていこうという意思表示であり、それを継いだ思想/Visionとしての American Dynamismとして昇華されていった印象がある。
問題の一部は明らかに先見性、想像力の欠如です。しかし、問題のもう一つの部分は、私たちが事前にしなかったこと、そして今私たちが失敗していること、にこそあります。それは行動の失敗です。より具体的には、私たちのビルド(構築)する能力が広範囲にわたって足りなかったということです。 (It’s Time to Build より)
ではなぜこのようなものがa16zから発されているナラティブなのかについて文脈整理を考えたいと思う。
お金の流れを変える・創るナラティブの創造
以前に書いた“時代を動かす思想はなにか(加速主義か利他主義か)~VCが加速主義を盲信する理由~”でもa16zには言及したが、基本的にはVCは変化を好む。変化を加速させることが経済的な利益にも繋がることが多い。
つまり、a16zがやろうとしていることは、金融の流れを変える/お金の流れを変えることだと捉えている。
VCの役割変化?
ここに関しては若干USと日本でも違いはあるのだろうけど、Venture capital自体の役割の変化があるのかもしれない。結局は投資をしてリターンを生むというビジネスモデルにはもちろん変化がないが、変化している業界に対して投資をしていくだけではなく、変化する投資を起こす/ナラティブを創るみたいなこともやっていっているのではないか?とも思う。
毎年、すべての市民と企業からお金を集めている政府は、お金の分配が最も必要とされているときに、お金を配るシステムを構築したことがないのです。(It’s Time to Build より)
かといってこれが目新しいというわけではない、古くは失敗したがGreen tech/Clean tech への投資をクライナーパーキンスが率いて創っていた時代も2000年代にあるため、必ずしもこれが新しい役割というわけではないとは思うが、もう一度そういった動き方をしているVCが多くなっているように見える
それはなぜか?一言でいうと、ファンドサイズの巨大化と、ソフトウェアに対しての投資の偏りが理由ではないか。
インターネット/ソフトウェアビジネスへの投資の偏り/テーマ不足
1つは、やはりそこには前回の記事で書いたような、手前で見えやすいロジカルシンキングで解ける問いというのが小さくなってきている。
もっと厳密にいうとソフトウェアだけによって解けうるロジカルシンキングで見つけられる課題が少なくなっている。しかし、未だにソフトウェアに対する投資が偏りすぎている可能性はある。
ソフトウェアという業態が優秀すぎる
これにはやはりインターネットという変化において、ソフトウェアという業態が相性が良すぎたということはあるのではないかと思う。ITが虚業と呼ばれていた時代があるように、何か実体としてのモノが創られることは少ない。そのため、重いアセットがまずは必要なく、CAPEXがまずはそこまでかからずスタートすることができる。更にクラウドの進化により、少人数・低価格で始めることができるようになったのは起業の革命だと思う。
そしてそのため基本的には利益率が高くなることが多いはず。つまり資本効率性が良い事業実体となるはずなのである。(まあ実体はコンサルティングやCSサポートなど人的付加価値の割合が重くて、そうならない可能性もあるが)
なので最近AIの発展に伴い、Sam Altmanが少人数での非常に大きな事業が作れる可能性があるという発言をしたと思うが、それは可能性が高い。
これは証券や金融業にも近いような業態/業種である。そのためFintechと呼ばれる産業からユニコーンが量産されている理由も理解できる、相性が良い。そのためこういった分野に対してお金が集まっている。
またWeb3であったりAIであったり、XRのような技術は日進月歩しており、こういった技術の交差点に何かイノベーションが生まれることは間違いないので、VCは期待する。なのでそのようなソフトウェア企業にお金が集まっている、もっというと極端に集まっている現象が起きているのが今なのではないかと捉えている。
その結果Runwayが異常に長いソフトウェアのスタートアップが多くできてきているのがこの数年の現象なのではないか。これが悪いことかというと一概にそうではない。そうした余白があるから大きな挑戦ができて、大きなスタートアップができることはVCにとっても全く悪い話ではない。
しかし、”It’s Time to Build”で指摘したように、そのような偏りだけだと本当は引いてみたときに課題だと言われていたことに対して、実はお金が回ってないなのではないかということを指摘している。そのとき社会はコロナのパンデミックの時のように、大きなダメージを受けてしまうことを危惧している。
積み上がるVCファンドのドライパウダー
またそのような現象を示すようにVCファンドのドライパウダー(待機資金/手元資金)は積み上がってきている。つまりまだ投資されていないお金というのが多くなってきているのが現状なのである。
これは、スタートアップに対する好循環(良いスタートアップ投資する、リターンが出る、多くVCファンドも資金調達できる)が今まで回ってきているが、今後そのようなお金をどういうところに流していくかについては、より一層の戦線拡大が求められている時代になりつつあるのではないか(それが良いか悪いかは棚上げして)
そのためにも、お金の流れを変える・創るナラティブの創造と言うに対してa16zは取り組んでいるのではないかという文脈で自分はこの流れを理解・整理している。
ではなぜ、American Dynamismという文脈を生み出していったのかについて考えてみたいと思う。
American Dynamismという”ナショナリズム”へのナラティブ
American Dynamismと聞いたときに、平成の日本に生まれ・日本育ちの自分からするとナショナリズムが強いな・・って感じたのが正直なところだ。”国益のため!”という言葉があるように、トランプの”Make America Great Again”のような感覚をお覚えた。そういったものに対して、少し嫌悪感を覚えてしまう世代なのかもしれない。
アメリカン・ダイナミズム・プラクティスは、航空宇宙、防衛、公共安全、教育、住宅、サプライチェーン、産業、製造といった国益をサポートする創業者や企業に投資しています。ミッション・ドリブンで市民意識の高い創業者は、重要な国家的問題を解決するために、業種やビジネスモデルを超越した企業を構築することが多いと私たちは考えています(American Dynamism by a16z より)
一方でナショナリズムの要素を一概には否定できないことも理解できているし、ここは第二次世界大戦後の日本に生まれて教育を受けた自分と、アメリカで生まれて教育を浮けてきた人たちとは違う感覚ではあるはずなので、自分の嫌悪感が正しいとも思ってはいない。(ついナショナリズムは排外主義と結びつきやすいことが頭をよぎるため、そういった嫌悪感を覚えてしまう)
だがそういったナショナリズムを担ぐようなテーマ設定/タグライン設定をしたのはなぜだろうか、そこにはいくつかの要因があると考えている。
①米中のヘゲモニー争いの激化
これは言及するまでもないが、近年アメリカと中国とのヘゲモニー争いは激化している。よくみるGDPのグラフなどを参照いただければわかりやすいが、2010年代に日本を中国がGDPで抜いて以降急速に成長を遂げており、世界経済における存在感も増している(直近は経済的に苦戦している報道が多いが・・)
そのような中で、Bytedanceの問題であったり中国のソフトウェア企業などがUS内でもシェアを奪いはじめていることに危機感をアメリカ政府としてもある。もっと拡大するとAIや防衛技術など含めたそういったものの流出であり、技術的競争力において敗北することがアメリカからすると恐れているのだと思う。
これはアメリカの帝国主義化ということまで言及すると言葉が過ぎるかもしれないが、そういった時代に入ってきているのかもしれない。世界大戦前の帝国主義っぽさというよりは、経済的帝国主義と読んだほうがいいのかもしれないが。。
それまで第1世界を統率し保護する超大国として自由主義を維持してきたアメリカがそれを放棄し、新自由主義を唱え始めている。つまり、資本主義経済のヘゲモンとしての米国の終焉が生じた。これは19世紀後半にイギリスが産業資本の独立的優位を失い、それまでの自由主義を放棄して帝国主義に転化したことと類似する。(中略)自由主義とはヘゲモニー国家がその最盛期においてのみとりうる政策である (力と交換様式より)
②グローバリゼーションの揺り戻しと、ブロック経済の進展
これは、①の結果というべき話なのかもしれないが、結果としてブロック経済が進展している。自由経済ではなくなってくると、よりその国であり政府の役割は強くなってくる。サプライチェーンの再構築から、資源や防衛などに必須なものをブロック経済圏/もしくは自国で補わなければならない。
このような時代に突入したことは残念ながら、American Dynamismのブログが出されてから1ヶ月後のウクライナ侵攻においてより強めたものだった。
例えば半導体の議論も台湾侵攻の可能性と密接に関連している。そういったブロック経済化が進展していく中で、アメリカとして求心力を増していくインセンティブであり必要性というものが強くなってきているはずである。
これは国際政治においてハードパワー(軍事力)を強めていくことにつながっていく流れでは残念ながらあってしまう。
パックス・アメリカーナよ再び
冷戦後のパックス・アメリカーナの元に新自由主義/自由経済を中心として世界の力学は進んできてしまったが、その揺り戻しが来てしまった。自由経済/ネオリベラリズムの衰退である。しかしここにきてより世界の覇権をアメリカが握ることによって平和がもたらされるというナラティブをつくっていくことのインセンティブが生まれてきている。もう一度覇権国家としてアメリカが世界を先導する機運を高めていこうという機運がある。
③ワシントンの注目とシリコンバレーの注目のズレ
そういったワシントンD.Cにおいて注目しているようなトレンドと、目の前の起業家を企業トレンドをa16zが見ていたときに、そういった国益のために企業するような起業というのが少なく感じたのではないか。
そこにおいてファンドサイズは国家予算に比べるともちろん劣るのは当たり前だが、年々大きくなってきている。なので新しい産業を生み出すことはVCの社会的な役割の部分が強まってきている。
しかしその役割が、”大いなる気晴らし”に対する投資に偏っていないかということについては確かに考えることはある、”暇と退屈のプライズゲーム”という記事で書いたように、現代の課題は暇と退屈であるが、それの解決策に資金がつぎこまれすぎていないかということを根底には批評としてはあるのではないだろうか。
例えばよく言う話ではあるが、ピーター・ティールの言う、”空飛ぶクルマを望んでいたのに、手にしていたのは140文字だ”みたいな、本当のイノベーションにお金が回っていない可能性がある。大停滞という本であるように、実は世の中はそこまで成長していないかもしれないという説はある。
私たちが得た生産性はすべて、ソーシャルメディアやゲームのような、対極にある気晴らしに浪費されてしまった (Network state より)
一方a16zはこういうことをいいながらClubhouseや、Web3・ゲームなどにも多く投資をしているから軽んじているわけではない。(かつ個人的にもそのような分野も重要だと思っている、カルチャーがないと人間の生きる意味が見いだせない。暇と退屈の倫理学で言う、生活にはバラも必要だと思う。)
こういったズレをなくすために、American Dynamismのようなナラティブをつくって、このような領域への起業や転職をつくって、金と人を動かしていきたいのではないだろうか。
Big issue に取り組むことを促す American Dynamism
このような3つの状況変化が絡み合いながら、前提のナラティブの創造と繋がっていくことによってAmerican dynamismという流れがでているのではないかというのが自分なりの文脈整理である。つまり、俯瞰的な視点に立脚して世の中を見たときに取り組むべきBig issueはあるだろう!という話である。
では、具体的にはどういった企業があるのかということも簡易にチェックしておこうと思う。
American Dynamicsの事例企業
最近実は国防のような分野だけではなく、教育から山火事のような社会問題まで様々なところまで、取り上げており、ナショナリズムっぽさでの偏見が少しあったのかもしれないけれども、前述したBig issue/見過ごしてはいけない課題に対してアプローチをしているように思える。
いくつかのa16zがまとめていた記事からいくつかの分野と企業を抜粋した。実際にはもっと紹介されているので、興味あるかた元記事などをみていただければ幸い。
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農業技術:Apeel Sciences(農作物の保存コーティング)
航空・宇宙:True anomly(宇宙安全保障),Floodbase(洪水などの災害被害把握),
防衛・治安:Vannevar labs(軍事・政府用のセキュリティ),Flocksafety(AI強化防犯カメラ),ShieldAI(AIパイロット/ドローン),Aerodome(事故現場/事件現場にドローンを飛ばす),Saildrone(海洋ドローン)
教育:GUILD(雇用主負担リスキリング),binti(養子縁組マッチング), Synthesis(AI活用した子供向けデジタル家庭教師)
エネルギー/Cleantech:Kobolo metals(鉱物の発見をAIで手助け),Pano AI(山火事対策カメラ),核融合/原子力関連いくつか
政府向け:OPENGOV(行政のための支出管理)
住宅:Cover(低価格/モジュール家)
貧困:Propel(低所得者向けの支出/給付金・食管理), Earnin(給料前払い),Divvy(不動産購入サポート)
人材不足/製造・ロボット:Formic,Stored,Dexterity,Gecko robotics,Amp robotics(倉庫系のロボットが多いが基本的には工場などで人間の代わりになるロボティクスサービスを開発)
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上記の他にもあるが、”企業の課題”や”消費者の暇と退屈の課題”ではなく、国や地域などが深刻に抱えている課題、例えばエネルギーや山火事や、貧困や教育などを取り上げているのがわかる。
国として対応すべきBig issueを選定しており、それにアプローチしている企業を選定しているのがよくわかる。
では、ここまでAmerican Dynamismの文脈整理と具体例としての企業について記載したが、日本はどうなのか?日本に転用可能性があるのかについて最後に考えてみたいと思う。
Japanese Dynamismはあるのか
弊社ANRIの鮫島が書いた記事やCoral Capitalの記事などでも言及されてはいるものの、Japanese Dynamismというのをもし文脈組成すると何があるのだろうか?/日本において転用可能性はあるのだろうかについて今一度考えてみたい。
上記で行った文脈整理から、Japanese Dynamismを考える前提条件を考慮すると
・今VCからお金があまり流れてないが、国にとって重要なIssue/課題
・グローバリゼーションの揺り戻し/ブロック化していくことを考慮する
ということが上げられるのではないかと思う。そうした場合に日本にとって上記が当てはまるIssueというのはどういうのがあるのかについて考えてみたい。
Japanese Dynamism
・高齢化社会
これはいわずもがなであろうな日本国としての課題であろう。この高齢化社会に対応する課題は多様なものに分かれている。こういった領域に対してお金は動いているとは思うが、より一層実は解決策は求められるであろう。
例えば、地方における高齢者の移動問題などは喫緊ではある。高齢者ドライバーの事故の問題は良く目にする。これはライドシェアなのかもしれないし、将来的には自動運転かもしれないし、コンパクトシティなのかもしれない。
他にも介護問題などもおある、手前味噌だが例えばスリーエスという投資先は、24時間の定期巡回介護事業を行ったりしている。こういった課題に挑戦するスタートアップはまだまだでてきてよいのではないかと思う。
更にこの辺りを広げていくと、あまり明るい話ではないが必ず多死社会が訪れることは間違いない。そういったときに現状のお墓の問題であったり、含めて課題は多くまだまだありそうである。
このようにもしJapanese Dynamismがあるとしたら、この高齢化社会などは必ず取り組まないといけないものであろう。
・人材不足
高齢化社会とも伴う課題ではあろうけれども、人材不足はこの国にとって深刻である。労働生産性も高くはなく、出生率(1.39%)は低下しつづけており、移民を受け入れることもしてはいない。そうなると小学生が考えても人材は不足するのは運命である。
そのときにAmerican Dynamismの事例でも多くでてきたが、例えば倉庫の自動化であったり、ロボティクスをうまく使う必要性は今後よりでてくる可能性が高い。ドラえもん、鉄腕アトムを生んだ国なので、ロボットを実際に活用するのも一番早い国でありたいなとおもいつつ、最近はファミレスにいくとネコ型ロボットは一応いるので、ちょっとずつ代わってきているのかもしれない。
SaaSや、人材サービスのようなサービスはもちろんこのあたりに効いてくる解き方ではあるが、骨太な人材不足に挑戦するスタートアップがより一層でてくることはより求められるであろう。
・ジェンダーギャップ
資料やデータを表示する必要もないだろうが、このジェンダーギャップも先進国から見ても、どう見ても遅れていることは明らか。ここに関しても様々な対応は求められるであろう。
これは例えば、つくりおき.jpや、投資先でいうマチルダなどのような家庭料理や家事の時短などにも投資としては良いのかもしれない。性別などに関係なく社会進出できる環境づくりへの投資などは必要である。
この中には例えば保育園向けのサービスみたいなのもあれば、企業などにDE&Iのような啓蒙活動をしていくことなのかもしれない。
このような広義でのジェンダーギャップについての取り組みを促していくことも日本問いう国が抱える課題の1つなのではないかと思う。
・エンターテイメント/コンテンツ/食/観光
実はこのあたりはJapanese Dynamismなんかじゃないと思っている。以前失われた30年で何を得たのか?という記事を書いたけれども、ブロック化していく世界の中でソフトパワーを醸成していくという意味においてもコンテンツ/エンターテイメントは重要なのではないかと思っている。
"ソフトパワーは、国が軍事力や経済力(ハードパワー)とは異なる手段を用いて、他国に影響を及ぼす能力で、具体的には、文化、政治的価値観、外交政策などの魅力を通じて、他国の人々や政府を説得し、自国の目的を達成する力”というのが良くいわれるソフトパワーの説明である。
そうしたときに、世界情勢がブロック化していくからこそ、そのブロックを飛び越えるようなソフトパワーを日本という国が纏うことをより強化していくことは、国際政治の場などにおいても意外と重要なのではないだろうか(こういったものを政治利用するなという声もわかるが・・)
ソフトパワーは、他国に対して脅しや買収でなく、魅力で影響を及ぼすことが出来る能力と理解されている。(中略)
ソフトパワーは国際政治や米国にのみ当てはまるものでもない。「魅了する力」は、小さな国々や団体にもある。ソフトパワーは、少なくとも民主主義国家ではリーダーシップの欠かせない要素なのだ。(【寄稿】「力ずくの時代」にソフトパワーはなお有効か 国際政治学者 ジョセフ・ナイ)
ポケモンなどをはじめとしたIPはいわずもがなだが、例えば音楽や、日本食などにおいてもひとつ可能性があるのではないか、その延長においてはFoodtech系の企業がより日本にあっても良いとは思っている。
また、このエンターテイメントの延長には観光立国としての日本ということも重要だと思っている。インバウンドというのは長らく言われているので、特にお金が回っていないこともないとは思うが、まだお金の流れる余地はある(といってもインバウンドのスタートアップのテーマって難しいんですがね、、NOTAHOTELのように、ホテルつくるとかになってしまうかもしれない)
・国防/サプライチェーンの再構築/エネルギー/資源
シンプルかつ、テーマとしては少し触れづらいが、ブロック経済化が進んでいく中では国としては考慮をよりしないといけないのはこのようなところではあろう。実際に今回のアメリカの選挙の結果等含めて、台湾リスクも広義では国として考えないといけない。
正直個人の感想としては考えたくはないが、ウクライナ侵攻が起こってしまった現在において自分の常識の範囲外での想定は起こるものではあるので、国としては対策は必要であろう。
しかしVC・スタートアップとしては国防領域には現状は多くはない。ここにおいてはいろいろ正直むずかしいが、その広義でのリスク対策としての、サプライチェーンの再構築やエネルギー確保、資源獲得ルートの獲得などを補助したり手助けするような企業は今後より出てくるのではないかと思う。
例えば半導体の供給が足りなくなる可能性や、食料自給率の低さなどは今回のブロック化を期に捉え直さないといけない国家的な課題ではあると思う。そういったものに注力するスタートアップはでてくるべきではないかと思う。
・気候変動/脱炭素
このテーマは重要だが、日本にかかわらず重要かつ様々な記事があるのでコメントは省略。
まだまだ日本における課題は多いはずだが、このあたりの分野というのはもちろんVCやスタートアップも課題としては捉えているが、まだまだお金が流れていない分野ではあるのかもしれないと思い、Japanese Dynamismをもし定義するならこうかもしれないというものを書いてみた。
またこれはLuupなどを近くでみてきていて、ワシントンとシリコンバレーは物理的に遠いが、日本においては東京にすべて集まっているので、官民が近くやっていくことができることはポテンシャルがまだまだあるのではないかと思っている。
ただし、このナラティブを本気で創る気はまだないが、もし起業などを考えているなら一つ参考にもしなれば幸い。
前回のブログでかいたような、Speculativeな考え方でどんどん問いを生み出していく、問題をいわば勝手に作り出していくということと真逆な視点で、Big issueに対する挑戦のナラティブとしてのAmerican Dynamismを今回は取り上げてみた。
先述したが、このナラティブを今はそこまで盛り上げる気はないが、1つ起業のアイデアの出し方や、投資の仮説・アイデアの立て方としては参考になるようなものではないかとは思う。自分はSpeculativeなアイデアも、このようなBig issueへの挑戦もどちらも非常に重要な試みだと思っており、どっちが良いというポジションはとりずらい。
どちらのほうが起業する際に向いているかは、起業家のタイプによると思う。商売人的な、ストリート育ちっぽいセンスがある方はSpeculativeっぽさのアイデアのほうが相性が良い気がする。逆にリサーチタイプであったり、ラーニングアニマルぽさのほうが強い場合はBig issue向きでもあったりするのかなとはおもうが、まあどっちの才能も必要だとはおもうので、自分をメタ認知しつつ自分に合った発想法で社会にインパクトが出せる起業家が増えることを祈っている。
一方VCとして、このあたりの日本なりのナラティブの創り方は、a16zを見ていて考えないといけないなと思ってはいる。投資をするということはお金の流れを変える行為であり、どういった未来を創っていきたいか、何をしたいかというのは自問しながら、今後も仕事をしていこうと思う。自分なりの投資について言語化できそうであれば、そのときにまた記事化してみたい。
引用
https://a16z.com/building-american-dynamism/,https://a16z.com/american-dynamism-50-ai/,https://a16z.com/american-dynamism-50/,https://a16z.com/its-time-to-build-for-america-announcing-our-500m-commitment-to-companies-building-in-american-dynamism/,https://www.axios.com/2023/05/09/andreessen-horowitz-silicon-valley,https://www.graygroupintl.com/blog/american-dynamism,https://coralcap.co/2022/12/investing-in-the-toyotas-and-sonys-of-the-reiwa-era/,https://note.com/anri_vc/n/n2581a22272b6
-Startup:Cover
年初の投資したい先みたいなところで、家を候補にあげたがこのCoverのような企業は面白いなと思う。モジュール式の家をワンクリックで購入できるみたいなコンセプトの家を売る企業だ。テスラのような思想の印象を受ける。
値段も下記のように安くはないが、これだけで工場でほとんど家が創られて配送されてくる。なんと基礎工事完了後に、30日以内には家が建設されるらしい。
家についてはイノベーションがまだまだ起きていない分野だと思っていて、こういった低価格なモジュール化された家なのかはわからないが、個人的にはこのような分野に挑戦してみたい気持ちはある。
400平方フィートのワンルームで20万ドル、600平方フィートの1ベッドルームで25万ドル、1,200平方フィートの3ベッドルームで最高50万ドルといった具合だ。(Techcrunch)
-Books:世界のラグジュアリーブランドはいま何をしているのか?
最近このラグジュアリーブランドについて非常に興味がある。その製品ももちろん興味あるが、どちらかというとなぜラグジュアリーブランドはラグジュアリーでありつづけられるのか?そういったブランドという付加価値をどのようにして組成し、保っているのかが気になっている。
AI含めた進歩の中でおそらく機能的なものっていうのはどんどん限界コストが安くなっていき、誰でもとはいわないが創られるようなものが多くなってくると思う。その中でも人が買う理由、何かを選択する中でブランドというものは今後より一層価値の置き方が強くなってくるのではないかと個人的には感がている。
この本がその問いにバッチリ答えられているかというと、そうでもない。ただコロナ以降でのブランドの努力や、思想みたいなのは垣間見える本ではあったので、このような領域の起業家や、働いている方は一読する価値はあると思う。
クリエイティビティこそラグジュアリーの本質。クリエイティビティはラグジュアリーを定義づける要素である。時代感にあったものを創出する必要性がある。リスクをとらないとラグジュアリーではない。クリエイティビティは、カテゴリー全体やブランドイメージ、ブランドと顧客の接点などすべてに落とし込めるべきもの。
このあたりのブランドとはなにかについても自分の中で言語化してみたいチャレンジはあるものの今は断片的にしか思考がまとまってないので、いつか書きたいなと思っている。