先日、Eastventuresの平田さん主催のVCVCというイベントに参加した。今回のテーマがVibe Codingということで、前から気になっていたテーマだったため、非常に良い機会となった。(詳しくは下記記事へ。平田さんありがとうございます!)
https://note.com/vcvc_official/n/n83c2fd96c281
イベントでは実際にVibe Codingを体験し、本当に、一行もコードを書かずにWebサービスを作成することができた。この体験を通じて、一つのWebサービスの方向性があるかもしれないと思えた。
それは、Webサービスの開発コストが劇的に下がることで、Webサービス自体の位置づけが根本的に変わる可能性もあるということだ。そう考えた理由について今回はまとめていきたい。
Vibe Codingとは何か
Vibe Codingの定義は様々あるが、今回のイベントで理解した概念としては、自然言語だけでコーディングを行うということだ。元OpenAIのAI研究者であるAndrej Karpathyによって提唱されたこの概念は、コードそのものよりも、ソフトウェアの「雰囲気(vibe)」に焦点を当てる新しいプログラミングの形である。
実際に私自身も、一行もコードを書かずにWebサービスを作成することができた。全て日本語で指示をしただけで、厳密にはCursorが生成したデータベースのコードをSupabaseにコピペした程度だ。作成したサービスは以下のようなものだ。(人の最後に食べたいレストランは何か美味しい以上のものがあるはずだという仮説で作った。もうちょっと本格的に作ってみたいが、一旦これが何も書かずにできたのすごい。)
https://harmonious-longma-8befab.netlify.app/
このような体験は、従来のソフトウェア開発の常識を覆すものだった。専門的なプログラミング知識がなくても、アイデアさえあればWebサービスを形にできる時代が到来したのだ。(もちろん後述するが、セキュリティなど含めてそのまま実際の趣味の領域をでてものとして使っていいかは判断は難しいと思うが)
「プロダクト ≒ メディア」への転換──その萌芽
Vibe Codingは「つくる行為」そのものを極端に軽量化し、プロダクトを"恒常的なサービス"ではなく"瞬間的な体験"として流通させる可能性がある。言い換えれば、〈作る→捨てる→次を作る〉のループが広告のインプレッションに近づいている。
そうしたときに、今後Webサービスはマーケティング手法としての役割を果たすことができるのではないかと考えた。つまりプロダクトとしてサービスが使われるのではなく、メディアとしてプロダクトが瞬間的にだけ使われる未来だ。
実際に「サービスがマーケティング化」した事例はすでにいくつも存在しているし、これまでマーケティング試作としてのサービスも多くあったが、その流れが加速するのではないかと今回Vibe Codingを体験したことで感じた。
その背景には広告費などの高騰と、D2C的な経営というトレンドがあるように思える。初期サービスであったときや、プラットフォームが色々勃興していた時代は、CACが安く撮れることができたためインターネット広告などにお金が流れやすかったが、現状は自分も感じるのは基本的にはCACはどのようなサービスでも高くなってきているという印象がある。
一方で以前記事でも書いたが、D2C的な経営というトレンドがある。それは単純にモノを売るというわけではなく、ユーザーとの関係性を深めることが重要になってきているし、中間を飛ばしてユーザーに自分のブランドを直接届けることができるようになってきている。
そのD2CのトレンドとCACの高騰の文脈の中で、こういったVibe cordingやAI技術の発展によりWebサービスがサービスそのものではなく、マーケティング手段として多く出てきているのではないかと考えた。
Vibe Codingが拓く"超・瞬間プロダクト"
制作コストが数時間になり、単独で表現できる幅がAIを活用することで広がっていく。この延長に今回のアイデアの方向性がある。例えばマーケティングチームの中にエンジニアが混ざったり、マーケッターや営業の人員が、エンジニアの仕様書でありルール設計の上で、広告のようにwebサービスを瞬間的に開発し、その瞬間で終わらせていく未来などはある気がしている。
例えばそれは、集客のためのツールとしてどんどん個社ごとにサービスっぽいものが開発されたりするのかもしれない。広告費を代理店に払って作る代わりに、その費用で自分たちで間接的にサービスやプロダクトを使ってもらうためのサービスをVibe cordingっぽく開発する会社など現れるかもしれない。
自社データやAPIを活用して、診断系やシミレーションや、ジェネレータ的なものは比較的すぐできる可能性が高い。それや例えば年末にSpotifyがやってくるようなWrappedふうなサマリーレポートを作って、SNSへの投稿を目指すようなものがマーケティングチーム主導で、自分のチームだけ作成することなどはできる可能性はある。
例えば下記の記事で紹介されているのはAIサービスを使って、製造向けSaaSの投資対効果を一問一答で計算するようなサービスを作って、成約率を高めた事例が出ている。
このようなAIを使ってパッと作ったものがマーケティングに効いてくるみたいな事例は今後より多く出てくる気がする。
しかしこの中でもエンジニアでない自分でも、いくつかリスクとしてはあるので実装が簡単なわけではないと思う。本番のDBを知らずのうちにいじってしまったなどあっては本当にまずい。Vibe cordingをやってみて最初だからもあるが、ブラックボックスの中でプロダクトが整形されていく。つまりいつの間にか触ってはいけないものなどを触って、変更してしまう可能性などもある。そういったDBなどの課題はあるだろう。
あとシンプルにセキュリティイシューは存在する。そのあたりまでプロンプトで指示すればいいのかもしれないが、そういった自分たちが見えないリスクを踏んでしまう可能性がある。なので実際にこういったアイデアを実現するのは容易ではないことも承知ではある。
グーテンベルクの活版印刷――「複製コストの臨界点を割った技術」が社会構造を一変させた
最後にこのAIの影響は、大袈裟にいうとグーテンベルクの活版印刷にアナロジーとして例えることができるかもしれない。グーテンベルクの活版印刷は「複製コストの臨界点を割った技術」が社会構造を一変させた出来事だと思う。Vibe Codingのような"数時間で捨てられるマイクロサービス"の勃興も、同じ力学で説明できると考える。
活版印刷前だと、写本しないといけなかったのでその分時間もコストもかかっていた。それが活版印刷により劇的に改善した。今回のVibe Codingがもたらすものも近いものがあるような予感がある。複製コストが指数関数的に下がると、制作行為がコミュニケーション行為に重なる。印刷物がパンフレットやビラとして政治的プロパガンダを担ったように、マイクロサービスが広告やナラティブ配信の器になる気がしている。それを今回はマーケティングのようなものとして捉えている。
16世紀に「印刷は知を腐敗させる」と嘆いた学者がいたように、AI自動生成による粗製乱造への批判はすでに始まっている。だが歴史的にみれば、供給が増えたことによっていフィルタリング層が誕生し、新しい公共圏やコミュニティが形成され文化に厚みが出てきたように思う。なので今回も一定度の混乱が数年はあるが、引いてみれば文化に厚みが出る可能性は十分に存在するであろう。
まだ変化の途中
Vibe Codingの普及により、Webサービスは「プロダクト ≒ メディア」という新しい位置づけを獲得できるかもしれない。webサービスを作ることがスタートアップだと言われてた時代は、webサービスを作れる人が貴重だったかつ、まだすべてをインターネット化していく課程だったからだと言われることがあるかもしれない。今2025年になってインターネットが呼吸のようにあり、Vibesでよりサービスが作れてしまうようになってくる可能性がある今、少しその意味合いは変わるものが出てくるかもしれない
ただ決してこれはwebプロダクトが陳腐化したということではない。よりセキュリティやUXなど含めてこだわり抜くべきプロダクトは今後も出てくるであろうし、Vibesであるかぎり限界はあるだろう。ただ動くものを素早く作れる1点においては多様な解釈や使われ方が今後増えるのではないかと改めて思う。
また、この変化を単なる効率化の手段として捉えるのではなく、新しいビジネス機会として積極的に活用することも考えたい。〈作る→捨てる→次を作る〉のループを通じて、より多くの顧客との接点を創出し、深い関係性を構築していくことが可能になる。
グーテンベルクの活版印刷技術が知識の民主化をもたらし、社会を大きく変えたように、Vibe Codingもまた、デジタル創造の民主化を通じて、私たちの社会に大きな変化をもたらすかもしれない。といっても現状のままだと、時間がある人と趣味的に作ることができるが、実際にもう少し発明が必要だとは思う。しかし昨今のAIの進歩を見ているとそういう時代が近々来るかもしれない。
大阪へKANSAI SEED2025というイベントへ参加してきた。
実際最近は京都や大阪への興味が数年前より増してきている。今回のイベントでお会いさせていただ起業家もそうだが、東京にない感覚がある。それがどのように結果に現れるのかが正直わからないが、不確実性の高さはシード投資家としては興味がそそられる。
インターネットで新しいことをするなら東京がいいかもしれないが、事業をオルタナ的に考えるのであれば大阪や京都などローカルだが、ローカルすぎない地域から何か出てくる予感もある。
その時にあまり東京を見ない方がいいと思うし、その独自なまま突っ走る中で見えるものもあるのかもしれないなと思う。改めてもう少し関西方面については自分も興味関心を伸ばしていきたいなーと思えた、
あとは、今回Jambaseという施設に行ったがそこも非常に東京では考えられない贅沢な使い方をしていたし、まず大阪駅の周りの再開発、思った以上に良かった。walkableだしあそこに公園は本当にナイスというか良い気でしかなかった。東京のなんか狭ーい感じではなく、開放感があった。
あと飯がうまいのと、個展が多くあるのは関西は本当にいいですね。とベタ褒めしつつ、隣の芝は青いという話で東京に住んでいるから東京の良さがわからないとかはありそう。そう言った意味においても、海外に出て日本文化を知るみたいなように東京の人も東京で活動するために、積極的に外に出るみたいな逆説はありそう。
あと大阪インバウンドと、万博で人多すぎ。東京より活気あった気がする。マジで。