ANRIというベンチャーキャピタルで働いている中路です。しれっと用意していたメルマガを始めてみました。こういうの3日坊主になりがちな人なのですが、なるべく自分の思いを書ける場所としてTwitterの代替や、ブログの代替として利用していこうと思いますので、もしご興味あれば登録などしていただければ嬉しいです。
WEB3はOwnership + Participation
恥ずかしながら先週発表したKyuzanなどに投資しながらも、じゃああなたはずっとCrypto・Web3を追っていたのか?って聞かれると正直そんなことはないです、すみません。知的好奇心の1つとしてCryptoはおっていたけれどもここ最近の流れをみてガッツリ興味をもち、2週間くらい調べたりNFT買ったりしている最中です。その中で自分なりのWeb3.0についての解釈・雑記を書いてみます(*調べている人にとっては普通の内容だと思うので、読み飛ばしてください・・)
WEB3.0とはどういう流れなのかというと、個人的な解釈ですが、”Tokenという発明によってOwnershipとParticipationがより重きを置かれ、その2つのドライバーによりネットワークが構築しやすくなっていく”という流れなのではないかと考えています(あくまで今の解釈なので今後変わる可能性はあります)
まずWeb1.0やWeb2.0の整理などは他の方々などいろいろされているので、すっ飛ばしますが、単純に情報共有用から情報を個人のユーザーでも記載することができるようになったけれども(Read&Write)GAFAを中心に非常にCentralizedされています。Web3.0ではそれをDecentralizedしていくことが可能になることであると言われています。例としてシンプルすぎますが、TwitterやFacebookなどを利用して読み書きできるが、そのデータやCreditはそもそもどこに所属するかというとTwiterでありFacebookが所有することになる。なので本当の意味でのOwnershipはこれまでユーザーにはなかったという事実があります(Creatorが主にこの領域において不利益を被ってきている)
そこにBlockchainが登場し、Ethereumが発展し、Tokenを発行することができやすくなりました。ここがWeb3.0の変わり目なのではないかと考えています。つまり財産権がインターネット上でもてるようになったそれをNFTとよんでもTokenとよんでも変わらず大事なのは、トラストレスな仕組みで価値をもつものが配れるようになり、価値をプロトコルによって担保されることができるようになったということなのかなと捉えています。そうすることによって何が変わるのか、それがOwnershipとParticipationという2つのキーワードで表すことができるのではないかと思っています。
Tokenなどをもつことによって、実際にその価値を第三者からみても担保されることになります。そうするとそのTokenの価値を上げたいとおもえてくるのではないでしょうか。それがOwnershipにつながってくるかなと思います。そしてその価値を上げるために必要なことがParitcipationなのではないかなと考えてます。そのTokenの価値をあげるために、Tokenを持つ者同士でコミュニティを組成し、盛り上げるために活動を行うようになる、そしてそれが参加者の経済的利益にも繋がる。このような流れをつくることができるようになるのがWeb3.0なのかなと捉えてます。OwnershipとParticipation、日本語でいうと”主体性”をユーザーに付与することができるのが、特徴なのではないでしょうか。なのでそもそもGameFiなどあたりから浸透しているのも、理解ができるかなと。もともとゲームにはOwnershipとParticipationの重要性が内包されていたから相性が良かったのではないでしょうか。もしかしたらアートもそうかもしれません。
そのようなOwnershipとParticipationの一つの新しい組織の在り方としてDAOというものが注目されているという流れだと捉えてます。DAOという組織形態・働き方こそWeb3.0の原理主義っぽい印象を受けますが、ただこれだとすべてのプロジェクトがDAOになっていくわけではないとおもう(他の方から教えてくれた表現で、連続的な意思決定とDAOの相性は良いが、非連続的な意思決定とDAOという組織形態は合わないって話されていてそれはそのとおりだなと思ってます)ので、Web3.0の思想においてどのようにいろいろなプロジェクトで表現していくのかは今後の課題かつ面白い論点なのではないかなと思ってます。その思想である、主体性を引き出すためのゲームルールの設定(ガバナンスであり報酬であり、Tokenの設計)が今後ベストプラクティスを貯めなければならない、現在いまいろんな形でそのあたりを挑戦しているのではないかという認識です。
そしてこのOwnershipとParitcipationが向かう先がどこにいくのかというのが”メタバース化”なのではないかと思ってます。デジタルな空間での主体性をもたせにいくことが必須になってくるためこのようなCryptoの技術がBaaSぽくなり、その上での動くものがメタバースとしてどんどんでてくるようになるのではないかなと個人的には考えてます。インターネット空間で過ごす時間が更に長くなり、価値の重きがインターネット空間により置かれるようになる。そのためにはこのWeb3.0的な匂い・香りをもったプロダクトの普及していくのではないでしょうか。
そういったWeb3の香りをSubstackやShopifyなどには感じます。WhatnotやGoatのようなコレクティブルのような文脈にも同じような香りを感じます(トークンの代わりにコレクティブルアイテム)今後どのように企業がWeb3の香りをさせながら実際に取り組んでいくのかをすごく楽しみにしていますし、自分も引き続きこのあたりの流れはWatchしていきたいと思ってます
先週あたり気になったニュースについてバラバラと
DAO周りのツール・サービス感がまとまっている。DAOの組織形態では既存の株式会社とは異なるガバナンスロジックで動いていく、そのサポートをしていくツールというものは投資領域としても面白いところだと思う。DAOの参加者の貢献度をよりわかりやすくしたり、分散型の意思決定における効果的な調整方法などを今いろんなやり方で模索している時期なのだろうと思う。ここからは個人的な考え方だけどDAO化する組織形態は必ずあるとおもうけど、全てがDAO化はしない中で、適切なサイズ・適切な目的・適切な運用方法のノウハウがここ数年で更に溜まっていく数年ではないだろうか。日本ではトークンセールスが実際にできないのでこういった実験にも乗り遅れることが残念で堪らない
a16zのクリプト投資で著名なクリスディクソンのNFTのユースケースに対する考察。7つのNFTのユースケースがあると記載されており、”アート・音楽・アクセス(権利)・ゲームオブジェクト・Redeemables(償還可能性)・アイデンティティ・web2データベース”であると言っている。とくに個人的にはアクセス・権利におけるNFTの使い方は日本において気になる。チケットでもいいけど、どこかに所属している証としてのNFTがEthereumのアドレスに残り続けることは、何かしらの証であり意味を持つようになると思う。来年は更にいろいろなNFTのユースケースであり、限界がわかる気がするので楽しみ
最高峰Cryptoファンド「Paradigm」の研究と彼らの未来予測
EVの村上さんが書いたParadigmのまとめ記事。なかなか日本語の記事がないなかでありがたい!Sequiaからの出身だとは全く知らなかった。そしてこの挑戦ができる与信と最初にBitcoinにぶっこめる肝っ玉の座り方が自分にはないなと思えたw 新しい産業に特化したVCとして研究分野などの人材を才能ありきで採用していくというのは面白いなと思えた。まだまだ市場の立ち上がり時にそのときの専門家がいるファンドというのは、一般的なファンドから投資を受けるよりは利がありそう。来年は日本や世界でもクリプトファンドは増えそうだ。
SmartHRの宮田さんが代表取締役を退任した経緯や、500人の組織のことについて話しているゼロトピック。日本において未上場でこれだけ調達できる状況になってきた上での課題の向き合い方としていつも先例をつくっていただいてるなと改めて思う。巨人の肩に乗るという言葉はすごい好きな言葉だけど、こういう事例の積み重なりがスタートアップのエコシステムになっていくのだなと。個人的には組織の規模拡大とモチベーション低下の話はしっくりきた。どの会社も規模に伴いモチベーションは当たり前に落ちていくなかで、どうその下がり方をなだらかにしていくのかというのは工夫次第なのかなと。またミッションの変更は確かにと、適切な目標設定とその成長に伴いどういうふうな目標を都度設定していかないといけないかは重要だなと
The Web3 Playbook: Using Token Incentives to Bootstrap New Networks
web3時代におけるDistributionの在り方について。ネットーワーク効果というものがこれまでは一つ重要なDistributionの広がり方であり、Moatであったということがこれまでの時代であったが、Tokenという発明により初期からDistributionをブーストすることができるのがWeb3の時代の在り方という話。マーケティングとセールスのやり方が抜本的に違う。一方そのTokenの設計を考えないと初期がインセンティブが一番大きい構造になるので、いかに保有しつづけてもらえるのかっていうのは考えないといけないのだろうなと思う
読んだ本について
2002年という少し古い本なのに今のスタートアップの人材難・採用の重要性・採用の捉え方について考えさせられる本。採用というのは経営戦略の根幹であり、HRの仕事でなく全社として取り組むべき最優先事項であることがわかる。”すべてはマネジメント人材指向からはじまる”というように、戦略ではなくすべては良い人を採用してマネジメントをしていくことが重要というのが、聞くとあたりまえだが深いなと思う。最近シードから投資をしていた会社がPivotを繰り返しながら、いま事業が固まり伸び始めているのだけれども、話をしていたら”なにをやるかよりだれとやるかのほうが100倍大事ですね、先にチームを固めておけばよかった”っていう話をされたのが思い出した。
VUCA時代と呼ばれる今に明確な参入障壁や、変わらない戦略論で勝てるゲームは少なくなってきた今、”常に組織は新しい人・優秀な人を採用していくこと”というのはこれからも最重要な企業の課題としてあり続けるだろうなと思えた。